岡山大学俳句研究部より、10月の俳句が届きました。
今月の句は「秋晴やパレットに出すれもん色」です。
解説
爽やかな空気感の中で、澄み切った秋の空とパレット上の黄の色彩のコントラストが素敵。れもん色を使って、果たしてどんな絵が描かれていくのだろうか?
掲句は、檸檬色を「れもん色」とかなで表現したところが妙。檸檬色は、「熟したレモンに見える鮮やかな緑味の黄色のこと」と辞書にあるが、言葉の歴史は意外と浅く、明治になって日本に伝わって来たものらしい。日本には、色を表現する言葉は山ほどあって、関連する語彙の豊富さは他国に例を見ない。
黄色ひとつを取っても、平安の黄菊の色を表す「承和(ソガ)」色や、うすい緑味の黄色で薄に似たイネ科の多年草「刈安」を使って染める「刈安(カリヤス)」色、食品の着色に使用される「梔子(クチナシ)」色、ウコンの根茎で染めた濃く鮮やかな「鬱金(ウコン)」色、ユリ科の萱草(カンゾウ)で染めた赤みを帯びた黄色「萱草(カンゾウ)」色など実に様々、枚挙に暇がない。
掲句は、澄み切った青空とパレット上に絞り出された黄色を鮮やに対比させた作品であるが、檸檬色を「れもん色」とひら仮名で表現したことで、視覚に訴えてくる筈の檸檬色が、筆者の脳内で生の檸檬に置き換えられ、その搾り立ての酸っぱさまで思い起こさせてくれるところが新鮮だ。
句の選者のお一人は、
「色彩が鮮やかな句だと思います。晴れの日の空の青色と檸檬色が補色関係にあることからお互いの色が引き立っていて綺麗だと思いました。れもん色の「れもん」がひらがなであることからはこの句の柔らかさが感じられて作中主体の穏やかな気持ちが伝わってきます。秋の晴れた日にのんびりと絵を描いているゆっくりした時間の流れが感じられて好きです。」と評してくれた。
もう1人の選者からは、
「中七下五のさわやかな感じが秋晴とよく合っていると思います。れもんという表記もまた色の温かみが感じられ、色にフォーカスが当たっていく語順も想像が広がり面白いと感じます。景の切り取り方もとても巧みで、絵を描き始めるときでもなく、まだ何を書くか分からないが絵具を出す段階の持つ広がりが、秋の空の高さと響き合っていると思います。」との感想が届いた。
そして、作者からは、「先日、運動公園の辺りを通ると水彩スケッチをしている人を見かけました。池の光の反射を塗ろうとしたのか、淡い黄色を取り出して画用紙に塗り始めました。秋の美しい日を忠実に、しかし自己の見え方や感性を反映しながら描く姿が印象に残り、このように表現させて頂きました。」と作句のきっかけを頂戴した。
また、選者のお二人に対し「色彩の対比などを読み取っていただいて光栄です!」と感謝の一言を残してくれた。
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