岡山大学俳句研究部より、9月の俳句が届きました。今月の句は
ぶつかりて網戸を落つる羽音あり」です。

作者コメント

夜、おだやかに過ごしていた時に生まれた句。虫が網戸にぶつかって落ちた瞬時の状況を聴覚で表した。いきなりコツン!ザラザラ、という音がして驚き、俳句にした。たったそれだけのことであるが、聴覚だけで想像するのも面白いのではないだろうか?

解説

掲句の季語は「網戸」で、季節は夏。網戸に虫がぶつかる音は、誰にでも聞く機会はあるはず。ぶつかってきたのは、果たして何だろうか?状況を表す言葉は「ぶつかる」、「落つる」「羽音」の3つです。黄金虫、蛾、蝉、それとも蜻蛉?まさか、鳥ではあるまい。コツン!ザラザラという音がしたと作者評にあるので、甲虫類だろうか?などと、想像が広がっていき、自分なりの世界に入り込んでいけるのが愉しい。

俳句の世界では、目に見えるものをありのままに詠むのが一般的だが、掲句は、目に見えない何かが網戸にぶつかり、網戸と葛藤しながら落ちていく羽音をそのまま表現したものでユニーク。しかも耳に聴こえた音を表現しただけのシンプルさ。

シンプルであるが故に、却って読み手の想像力を掻き立て、それぞれの世界へ引き込んでいこうとする掲句は、まさに、俳句ならではの醍醐味とも言えます。耳から入ってきた音情報に、待ってました!とばかりに反応、すぐさま俳句脳にスウィッチが入り生まれた佳句です。

岡山大学俳句研究部 過去の作品

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俳句のぼり 7月
俳句のぼり 6月
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