岡山大学俳句研究部より、7月の俳句が届きました。
今月の句は「辞典よりやはき風くる土用かな」です。  

俳句のぼり(7月)

作者コメント

うだるような土用の暑さの中、勉強をしていると、パラパラとめくった辞典の薄いページから微かな風がきて束の間の涼しさを感じた。

高校の頃、古典の授業の前には必ず予習をしなくてはならず、突き詰めて細かいところまで辞書を引いて調べていたのを思い出しつつ作った句です。

今思えば貴い時間だったように思われ、なんでも辞書を引くようにしようと気を引き締めたりしています。(実際は怠けてばかりいるのですが…)

解説

現代は、言葉の意味を知りたければ、スマホでググれば済むという便利な時代。お蔭で、近頃、辞書を引く機会もめっきり減ってしまいました。

何でもそうですが、こつこつと続けてきた習慣を止めてしまうと、復活するのは至難の技。

辞書も同様で、一旦、引くことを止めてしまうと、よほどの必要性に迫られない限り、わざわざ辞書を持ち出してまで、確かめようと言う気になれないものです。

作者は、大学生で、掲句は、数年前の高校時代を思い出しながら作ったそうです。

 

辞書の紙は薄くてとても柔らかく、それでいて使用に耐えるべく頑丈で、長年使っていると、紙が黄ばみ、愛着が生まれてくるのも不思議。

知らず知らずのうちに、ページを捲る時の、あのペラペラという独特のやさしく柔らかい音にも魅せられるようになるのです。

景は、うだるような土用の或る日、古語辞典を片手に、作者が古文と格闘している場面。じっとしていても汗ばむほどの暑さ、しかし、ひとたび辞書を引き始めると、言葉の微妙なニュアンスの違いや、その他の意味まで確かめてみたくなって、いつの間にやら辞書の虜になっていることが多いが、とりわけ、苦労して探り当てた言葉の意味が,腑に落ちた時の喜びは計り知れない筈。

そんな状況で、パラッと辞書を捲った瞬間に生まれた微風、決してひんやりとして心地良いものでは無いと思うが、古語の意味を探り当てたという達成感とも相俟って、作者は、肌で感じられる以上の爽快感、否、涼しさを感じたのかもしれません。

作者の語彙探究に向けた熱意と感性が生み出した一句にエールを送りたい。

 

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