岡山大学俳句研究部より8月の俳句が届きました。今月の句は

出穂(でほ)の香の道電話線工事中

作者コメント

電話線工事は、一度出来上がった道を、掘り返す様に進む。初秋の匂いのするこの道も、さりげなく工事が行われている。

解説

梅雨明け宣言が出されて、連日の猛暑が続いていますが、掲句が幟に掲げられる頃は、暦の上では早くも秋で、そろそろ稲が穂を出す頃です。

掲句にある出穂(でほ)とは、穂を形成する作物において、4~5割の穂が出穂する時期のこと。「しゅっすい」とも言いますが、稲では、早稲で50日、晩稲では80日後頃のことを指します。

俳句は、「五・七・五」拍子が基本ですが、文字数のズレた「字余り」や「字足らず」、この句のように、リズムのズレた「句またがり」などがあり、これらが一般的に「破調」と呼ばれています。

破調の名句として、

・明ぼのやしら魚しろきこと一寸(松尾芭蕉)

・大学のさびしさ冬木のみならず(加藤楸邨)

・摩天楼より新緑がパセリほど(鷹羽狩行)

があり、それぞれに五・七・五拍子では味わえないリズム感と一体化した句の佇まいがあって興味深く、今もって人口に膾炙しています。

掲句の場合、「出穂の香の道」=7文字、「電話線工事中」=10文字から成る 計17文字という構成になっていて、五・七・五のリズムでは表現し切れない、悠久の時間の流れや広がりが感じられます。

縄文の時代から連綿と受け継がれてきた稲作という、謂わば普遍的なものと、生まれてから、まだ150年ほどの歴史しか持たない文明の利器、電話の対比、しかも最近の携帯電話やスマホの進化により、何れ不要になるであろう電話線工事は、今後、いつまで続けられていくのでしょうか?

通りがかりの田圃に見つけた稲の穂に初秋を感じ取ると同時に、稲作という普遍的なものと、現代文明の進化の儚さ・危うさという両極端にあるものを、上手く切り取ってさりげなく詠んだ、作者のキラリと光る感性に拍手!

岡山大学俳句研究部 過去の作品

俳句のぼり 7月
https://ohisama-energystation.com/ohisama-20190618/” target=”_blank” rel=”noreferrer noopener”>俳句のぼり 6月
俳句のぼり 5月
俳句のぼり 4月
俳句のぼり 3月
岡山大学俳句研究部 応援のきっかけ

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