Information俳句のぼり（12月）完成しました！（岡山大学俳句研究部）

岡山大学俳句研究部より、12月の俳句が届きました。
今月の句は「恋バナにならぬ話やおでん鍋」です。

俳句のぼり（12月）

解説

とかく恋の話は、深刻な結末に至ることが多そうだが、掲句は、場面が仲の良い仲間たちとおでんを囲む設定で、「恋」を軽くいなした感じの気風良さが場の雰囲気を上手く表現しているところが良い。

恋バナとは恋愛全体を表す俗語で、恋話の略語。理想のデートや結婚相手、彼氏や彼女にしたいタイプ、過去の出逢いや恋人にまつわる話題をしながら、場が盛り上がっていく様が容易に想像できる。

ところで、この「恋バナ」と言う言葉、いつ頃生まれたのだろう？筆者の若かった頃には聞かれなかった言葉である。

句の主人公は、恋人のことを話題にしたいにも拘わらず、場の雰囲気がそうさせてはくれず、何となくテレ隠ししながら笑い飛ばしてしまうことになってしまったのであろう。そんな歯痒い思いをした記憶が筆者にも蘇ってきた。

何れにしても、掲句に理屈は要らない。恋バナにならぬ話とおでん鍋の取り合わせが絶妙で、そこが句の大きな魅力になっている。読者は、漏れなく、庶民的な雰囲気のお店で、ワイワイガヤガヤ騒いでいる若者達の姿を容易に想像できるだろう。

掲句の選者も然り、そのお一人は

「友達同士で集まってｷｬｯｷｬｳﾌﾌと恋バナすると思いきや、「恋バナにならぬ話」ときましたか……！「ちょっと気になる人いるんだよね」程度の話なのか、それとも付き合っている人の愚痴になってしまったのか、色々な人達の表情が思い浮かんで想像が膨らみます。皆で同じものをつつく庶民的なおでんという所が、「恋バナにならぬ話」ととてもよく響きあっていると思いました。」

と感想を漏らしてくれている。

もう一人の選者は「恋バナにしようとも話のネタが十分になくてうまくいかないまま、結局友達同士の他愛ない話が続いている、そんな景が浮かびました。等身大の登場人物が背伸びせずおでんを囲んでいる様子が微笑ましく、素敵な句になっていると思います。」と語ってくれており、脳裏に浮かんだ場面は共通しているようだ。

作者の作句の意図は、

「おでんという庶民的なご飯を食べながら恋バナをする日常的な状況を句にしました。しかし恋バナにはなりきれていない…そもそも恋未満なのか、かわいくてドキドキする話ではなくなってしまったのか、結局話がそれてしまっていろいろな話をしている様子を想像していただきたいです。そんな人物たちをおでんはいつだって受け止めてくれます。仲良したちとおでんを囲む、あたたかい冬の日常を表せたかなと思います。」

とのことなので、選者の評は、作者の意図を上手く汲み取ってくれているようだ。

恋と恋未満との差はどこにあるのか？永遠のテーマであるが、人は百人十色、それぞれに心の持ち方・感じ方も異なるので、その境界が無限に存在すると言っても過言ではなかろう。恋バナにならぬ話と言って、軽く恋のことを突き放しているように見えて、作者は、実のところ、恋ってそもそも何だろうかということに思いを巡らしているのかもしれない。

岡山大学俳句研究部　過去の作品

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