岡山大学俳句研究部より、4月の俳句が届きました。
今月の句は「皺のなきセーラー服や山笑ふ」です。
解説
皺のないセーラー服とあるので、新調したてなのであろうか、それとも、前夜、お母さんが念入りにアイロンをかけてくれたばかりのものだろうか?句の主人公は、間違いなく、新入生、または新学期を迎えたばかりの学生さんであろう。
掲句の季語は「山笑ふ」で季節は丁度、今。意味するところは、春の山の明るい感じを表すものであるが、元々、北宋の画家の詩の一節を切り取って、季語に転じたものだそうだ。
山の表情を表現する季語には、他に、夏を表す「山滴る」、秋の「山装ふ」、冬の「山眠る」があるが、いずれも、その季節感を見事に代弁していて、十分、納得感がある。
一般的に、制服と言えば、地味な色の選ばれることが多いが、新しい年度を迎えて皺ひとつないセーラー服に腕を通す瞬間に感じる緊張感は誰しも経験したことであろう。上五・中七はそんな時期の学生の緊張感溢れる複雑な心境を「セーラー服の皺」という物で代弁させる力量は大したものだ。そして、下五の「山笑ふ」の斡旋によって、複雑な心境は、一気に春の山のおおらかさ、優しさに抱擁されることにより、やがて和らぎゆくのだ。
筆者は、さすがにセーラー服を着る機会こそなかったものの、小学校に上がった頃、撮った写真に、はにかみながらも、ある種の希望を抱いているかのような表情に見て取れる自分を見た思い出があるので、掲句の作者が皺のない服を着た瞬間に抱いた複雑な胸の内も良く理解できる。
掲句の選者は、
「セーラー服は大抵、紺やグレーなど暗い色一色で、しかも皺のないとなるとパリッとした印象が強まりますが、そこに山笑ふという色鮮やかでのどかな季語が取り合され、見事に対比されていると思います。詠まれている景そのものも、装いもあらたに、丁寧にこなしたくなる新生活の高揚感を切り取っていて、しっくりと伝わります!」と評してくれている。
制服のモノトーンと春の山の色鮮やかさとの対比への言及は、さすがだ。
一方、作者は、中高生の時代は、ずっとセーラー服だったそうだが、「最初は着ているというよりかは着せられている感じでソワソワしていました。そんな不安定さをどっしりとした季語、「山笑ふ」が包んでくれているようなイメージで詠んでいます。」と掲句を詠んだきっかけを語ってくれている。
選者の評に対し作者は、「色の対比は自分でも意識していなかったので、選者に自句の解釈の幅の広さを教わることができてとても嬉しく思いました。」と感想を述べてくれた。
セーラー服の皺から読者に主人公の心理状態を想起させておきながら、下五の「山笑ふ」で一気に大きな景へと転ずる展開は、何事に対しても怯まない心を持てとばかりに、大自然がエールを贈ってくれているようにも感じられ、新しい人生を切り拓いていく勇気を授けかったも同然だ。
さあ、明日から心機一転、色鮮やかな一歩を踏み出すことにしよう!
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