岡山大学俳句研究部より、1月の俳句が届きました。
今月の句は「赤龍の来て校庭のどんどの火」です。
解説
今年最初を飾るに相応しく、勢いがあり、思わず心の高鳴りを覚える一句である。
掲句の季語は「どんど」で季節は新年、年明けの小正月を中心とし、十四日、または十五日の朝に、松飾や注連縄などを燃やす火祭りの行事で、火勢の盛んなのが喜ばれるようだ。また、上五の「赤龍」は、余り馴染みのない言葉であるが、中国や日本の神話に登場する龍の名称の一つで、全身の鱗は真赤、口から炎を吐き出す勇ましい龍のことを示すそうだ。
筆者が、「どんど」と聞いて直ぐに思い出すのは、20年ほど前、仙台在勤の頃に体験した「大崎八幡宮」への裸参りと境内で執り行われた豪壮な「どんと祭」である。
裸参りに参加する者は、真冬の厳しい寒さの中、さらし姿で市内中心街から30分ほど練り歩いて後、八幡宮に到着、燃え盛るどんど焼の炎を拝む訳であるが、寒夜の冷え切った体を暖かく迎えてくれる火を、あの時ほど神々しく感じたことはそれまでに無かったことである。
作者によれば、掲句は、校庭のどんど焼きの景を詠んだものだとのことであるが、炎を「赤龍」に見立てたところがミソ。赤龍は、前掲のとおり、口から炎を吐く龍を指すので、火と近いように感じる方がおられるかもしれないが、掲句では、比喩ではなく、上五でさらりと赤龍の登場を表現し、下五の「どんどの火」で種明かしをするという構造なので、筆者は、寧ろ、どんどの火と赤龍をぶつけた点を評価したいと思う。
句の選者も「赤龍が気になって調べたのですが、炎に関係した龍なのですね…。校庭でお焚き上げをしている状況に、学校の風景とは異質な赤龍の取り合わせ、そして赤龍の「来て」というあっさりとした言い方が神秘とともにある民話的な世界を感じさせてとても好きです。」と評してくれている。
また、作者は「小学生の時に校庭でどんど焼きをやっているのを初めて見たのですが、まるで龍が登っているかのように炎が燃え盛っている光景に衝撃を受けました。しかし2度目以降はこの火でこそどんど焼きだ、と思えるようになりました。「赤龍」と「火」が近いような気もしますが、五穀豊穣や無病息災を願う人々の心や字の上達を願う子供たちの上り調子な気持ちが伝わると嬉しいです。」と作句の動機を寄せてくれた。
句の幟が出来上がる頃には、丁度、各地で「どんど焼」が行われていることであろうか。真赤に燃え盛る炎の勢いは強ければ強いほど、観るものに勇気と感動を与え、喜ばれるもの。今年は、辰年、まさに掲句の赤龍のごとく勢いがあり、幸多い一年になってもらいたいものだ。
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