岡山大学俳句研究部より、8月の俳句が届きました。
今月の句は「燃え尽きるように鳴く蝉僕はどうか」です。
解説
賑やかに鳴く蝉にも、種類は多い。
「ジッジッジッ~ジリジリジリ」といかにも暑苦しい声で鳴くのはアブラゼミ、「ミーンミンミンミンー」と賑やかに鳴くミンミンゼミ、「シャシャシャ~」とどすの効いた声で鳴くクマゼミなど、蝉それぞれによって鳴き声に特徴があって興味深いが、蝉が鳴く理由はオスのメスに対する求愛行動だということを聞くと、熱烈に泣き叫ぶ蝉の姿が、何やら涙ぐましくも見えてきて妙な気分に陥ってしまう。
その絶叫たるや、1秒間に2万回も体内の発音節という器官を震わせて出す音だと聞けば、鳴くために必要なエネルギーは想像を絶するものがある。一たび鳴き始めると声の限りを尽くして鳴き続け、ついに体力を使い果たして燃え尽きてしまうのだ。
先日、近所をウォーキングしている時に、偶然、羽化直前の蝉を見付けた。
空蝉の場合、背中の部分は割れ、中は抜け殻で、眼の部分は虚ろなので見分けは付く。私の見たものは、眼が黒く、わずかに動きもしてもいたので、羽化直前であるのは間違いないであろう。それから4,5日は経つので今頃は、他の蝉たちと競うように、或いは、燃え尽きるように鳴き叫んでいることであろうか。
それにしても、あの蝉の鳴き声を聴いていると、理由はともあれ、ひたむきな情熱とでも言おうか、蝉の懸命さがひしひしと伝わってくる。
掲句の作者は、作句のきっかけを「短い寿命を謳歌するような蝉の鳴き声に、自分はこの命を全うできているのか不安にさせられるが、強く生きていこうと決意した。」とあるが、これを受けて、掲句の選者は、「僕はどうか」と下五が字余りであることで、自問が重く首をもたげてくる感覚が表現されているように感じました。と感想を述べてくれている。
掲句は、口語調、且つ、現代かな遣いで詠まれている。これまでの俳句は、歴史的かな使いによって、文語調に表現されることが殆どであったが、最近では、口語調で詠まれる句も多い。どちらが良い悪いと言うことではないし、どんな世界にでも、時代の変化に伴って、変わっていくことは常のことではあるが、旧来の伝統を重んずる方々には、少々、抵抗があるかもしれない。
しかし、作品は体裁よりも中身である。読もうとする内容に依っては、口語の方が相応しい場合だってあるだろう。
掲句の作者は、大学一年生、最近の俳句の流れに沿った現代的な香りのする一句である。
中七の「ように」の表記は、旧かなづかいでは「やうに」と書かれるところであるが、掲句では、口語の語り調そのままに、また下五の「どうか」と自分への問いかけにもバランスよく対応できている様に思う。
蝉の激しく鳴く姿に触発され、さあ、自分もやるぞ!と覚醒できた瞬間に掲句が生まれたのであろう。読者も、掲句から、作者の発する生きることに対する何らかの強いメッセージを受け取ってもらえたら幸いです。
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