岡山大学俳句研究部より、5月の俳句が届きました。
今月の句は「春陰やかつて丘だつた団地」です。
解説
今月の句のテーマは団地。「団地」と言えば、戦後の高度成長に伴い、都会で不足する労働力を補う目的で、集団就職などにより、地方から都市へと、若者がどんどん移り住むようになってきたことから、私鉄沿線を中心に、都心から離れた郊外にある丘陵地などを開発することによって誕生したもので、団塊世代と呼ばれる人たちにとっては、懐かしい響きのある言葉として印象深いに違いない。
団地とは、もともと、住宅や工場などが計画的に集団をなして立っている土地のことを呼ぶそうで、当時は、「団地サイズ」とか「工業団地」などと言う言葉が流行したものだ。
その頃建設され、1971年から入居が開始された東京の多摩ニュータウンは、東京都南西部の多摩丘陵に開発された大規模住宅地で、筆者が勤めた会社の先輩方も、大勢住んでいて懐かしい。
そんな団地も、高齢化がどんどん進できた所為で、高度成長期に働き盛りだった若者たちも、今では、皆、老後を迎えている。そして、その子ども達や孫の世代は親元を離れ暮らしているから、昔ながらの団地は空っぽになって寂れゆくばかりだ。
季語の「春陰」(=明るい春にあって憂いを帯びた陰りを意味する)と前掲の経緯を持つ「団地」というものの盛衰とが不思議なほど響き合って、春であるが故の一抹の寂しさをストレートに読者に届けてくれている。
掲句の選者は、その辺りのことをたっぷりと自分の言葉で巧みに表現してくれている。
「光が強まり明るさが増す一方、暗さも際立つのが春という季節。曇りの日には行き場なく籠った湿度に、見えている世界の裏側、闇の側面にふと目がいくこともよくあるように思われます。「春陰」という季語にはそんな季感が託されているかと思うのですが、この句はかつてもっとも日の当たる場所であったはずの丘の上に無機的な団地が建っている風景、画一化された近代生活の背後にあるものをふと垣間見、その果てしなさに思いを馳せる瞬間を切り取っていて、春陰の景としてこの上なくしっくりきました。」
また、歴史的仮名遣いであることで、その閉塞感が視覚的にも効果的に表されていると思います。
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