岡山大学俳句研究部より、5月の俳句が届きました。
今月の句は「居眠りの途切れて窓の青葉かな」です。
解説
居眠りから覚めた時、目に飛び込んで来るものによって、どんなに気分が変わるものか、誰しも経験したことがあるでしょう。
目覚めた時、空が厚い雲に覆われて雨でも降っていようものなら、自然に気分が滅入ってしまうであろうし、逆に、澄み切った青空が広がっていたとしたら、直ぐにでも、出かけてみたくなるでしょう。
目覚めた時の景色が、人の行動まで左右してしまうという現象は、ひょっとすると、人間が、大自然の一部に過ぎないということを示す証なのかもしれません。
そんな風に考えると、コロナ禍の2年余りで、部屋の模様替えをする人が増えたり、観葉植物の需要が増えつつある現象は、部屋に閉じ籠る生活の連続で、すっかり落ち込み、荒み切った人の魂の底から込み上げてくる叫びの発露とさえ思えてきて、妙に納得させられてしまいます。
掲句の季語は「青葉」で、若葉同様、木々の美しいさまを表す言葉ですが、今頃の季節特有の緑の深まりを感じさせてくれて爽やかです。
居眠りから覚め、作者の目に飛び込んできたものは、窓の外の青葉だったので、目覚めの気分は最高だったに違いないでしょう。天候について触れられてはいませんが、青葉の煌めきが目に染みるほどの晴天だったと思いたいです。
作者は、作句のきっかけを「居ねむりがふと破られたとき、まぶしい窓の青葉の鮮やかな色が目に飛び込んできた」と伝えてくれています。また、選者は、掲句について、「眠りから覚めた瞬間の雰囲気や空気感を実感できる」と評し、作者の表現したかったことを、句からしっかりと汲み取ってくれていて、作者と選者の息もぴったり、互いの感性が響き合うようでとても気持ちが良い。
その心地よさを、更に増幅させてくれる表現が、中七の「途切れて…」です。
「途切れる」とは、言うまでもなく、「途絶える」とか「あとが続かなくなる」という意で、一旦、事が終結することを表しています。眠っている時、辺りは、バラ色の夢でも見ない限り、黒い帳の中にあって真っ暗、その闇から覚めたことを「途切れて」と表現することによって、暗い世界をスパッと断ち切り、明るい世界へと、舞台は一気に好転していったのです。
この鮮やかな舞台の転換によって、句に深い切れが生まれ、鑑賞者は気分がリフレッシュされていくのを感じることになります。
さあ、いよいよ、嫌な梅雨入りも間近、こんな季節に口ずさんでみたくなる、清涼剤のような一句です。
岡山大学俳句研究部 過去の作品
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