岡山大学俳句研究部より、7月の俳句が届きました。
今月の句は「頬杖の傾きに入る西日かな」です。
解説
掲句を目にした瞬間、先月、訪れたばかりの竹久夢二の生家のことが脳裏を過った。おそらく、掲句の主人公が、もの思いに耽る夢二の描くモデルと重なり合ったからであろう。
夢二であれば、果たして、その女性をどちらから、どのような角度で、如何に描くであろうか?…などと、妄想は膨らんで尽きることがない。
掲句の季語は「西日」。もちろん、季節は「夏」である。
強烈な夏の西日は疲れた体を鞭打つようで、いつまでも部屋に差し込んでくるやりきれない暑さには、厳しく耐えがたいものがある。こんなひと時の好きな人は少ないのではなかろうか?
ところが、一方で、「三丁目の夕日」ではないが、昭和生まれ世代にとって、西日の差す夕暮れ時の景に、妙にそそられることがある。
歳時記に見つけた
■浅草にかくも西日の似合ふバー 大牧 広
という一句の場面もそのひとつ。
「浅草」と「西日」の取り合わせ、さらに「Bar」とくれば、通りかかって立ち寄らない訳にはいくまい。理屈抜きで、西日の魔力によって、店へ吸い込まれていくことになるのだ。
話が飛躍してしまったが、掲句に登場する「西日」は、果たしてどんなだったのであろうか。
作者は、「ぼんやりと過ごしている夕暮れ時、頬杖をついて傾いた視界に、西日が射し込んできた時に浮んだ句である」と語ってくれている。
また、選者は、「ゆっくり流れている時間と西日の動きが見えてくるようだ」と感想を漏らしてくれているが、果たして頬杖をついて見遣る先に見えるものは?そして主人公の脳裏に渦巻いているものは何だったのであろうか?
掲句は、頬杖をついた主人公に西日が射しはじめてからのゆるやかな時の流れとその情景を切り取っただけで、他に何も語っていないにも拘わらず、読み手に様々な解釈を促してくれる装置のようでもあり、夢二の作品のごとく切り取られた景の素朴な魅力とも相まって、心惹かれる一句である。
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