岡山大学俳句研究部より、8月の俳句が届きました。
今月の句は「軒先の子亀を入れる日傘かな」です。

俳句のぼり

作者コメント

 

お店の前に置いてある亀の水槽をのぞいた時の俳句です。私の日傘の中にいることで、亀がより可愛らしく見えました。

解説

この句の選者は、寄せられた句の中から、掲句を選んだ理由として「小さい亀の甲羅に反射する陽の光やカラッとした暑さまでも表現されており、日傘の中に亀を匿うという作者の行為がとてもさりなげく素敵な句だと感じこれを選びました。」とあります。

炎天下、作者は通り掛かったとある家の軒先で、甲羅の1枚1枚にまで、ぎらつく太陽を浴びている子亀の姿を見た瞬間、子亀に自分を投影したのでしょう。咄嗟に、傘を差し出し、日傘に子亀を入れるという行動に至ったのです。

 

選者の弁にある通り、掲句から、作者ならではの、生きとし生けるものに対する優しい眼差しを感じ取ることができますが、その所為あってのことでしょうか、鑑賞した後に、この上もない爽やかな幸福感が残っているのも不思議です。

掲句で目に見えるものは、「子亀」と「日傘」のみですが、中七に置かれた「入れる」の斡旋によって、句に作者の心優しさが注ぎ込まれた刹那、句が一気に生気を取り戻すこととなりました。

 

辺り一面、紛れもない酷暑、しかし、作者の日傘を差しかけるというさりげない行為によって、子亀の周辺に涼しさがもたらされると同時に、亀の作者に感謝する眼差しまで見えくるようで、思わず寄り添いたくなる句です。

絵心あらば、俳画に認めてみたくなるような佳句です。

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