岡山大学俳句研究部より、5月の俳句が届きました。
今月の句は「ひとむれのむしにぶつかり八重葎」です。
作者コメント
道を歩いていると、八重葎のように、何かそこだけ濃い空気の立ち込めるような長い蔓や蔦をのばして生い茂る草むらがあって、気を取られていたところ、空中を漂う小さな羽虫の群れにぶつかってしまった。
解説
昼間の気温が一気に上昇し、初夏を迎える頃ともなれば、河原や土手で、羽虫たちが群れなして飛び交う光景を良く目にするようになる。そんな日常の小さな出来事を切り取った一句です。
季語は「八重葎」で、季節は夏。「葎」とは、目立つこともなく普段は殆ど気にすることもない炉辺の草のことを云いますが、辞書にも、「普通、「葎」と呼ばれるのは金葎のことで、詩歌で詠まれるのは、路傍や空き地などに絡み合って鬱蒼と繁茂する草のこと」と書かれています。
また、「葎」の中でも、掲句の季語「八重葎」は、葉が何枚も重なり合っている性格であることから、「八重葎」と名付けられたそうです。
そんな八重葎が生い茂る中を歩いていたところ、作者がぶつかったのが「羽虫」の一群。
「ぶつかる」とあるから、通常なら、相手は何か硬くて大きなものを想像してしまうが、掲句では、その対象が、ぶつかって衝撃を感じるはずのない羽虫であるところがユニーク。
物理的な衝撃ではなくて、羽虫の一群に触れた瞬間の心理的不快感を「ぶつかる」と捉えた作者の感性が、この句を引き立たせてくれて魅力的です。
日常の、ともすれば見過ごし勝ちで、些細な出来事をさりげなく拾い上げ、堂々たる一句に仕上げた作者の力量に今後も期待したいものです。
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