岡山大学俳句研究部より、4月の俳句が届きました。
今月の句は「カーテンの少し靡いて春の蠅」です。

作者コメント

暖かい日が続き、日当たりの良い場所に飛んできて、いつの間にか、飛び去り、そしてまた姿を見せたりする特性のある春の蠅。

コロナ禍で何にでも敏感になっている昨今、蠅も生来の仲間、すこしぐらいうるさくても。

解説

蠅は、本来、夏の季語。

ぶんぶん音を立てて飛んで来て、耳障りでやかましく、世間の嫌われ者となっている存在。

漢字で「うるさい」を「五月蠅い」と表記する辺りが、その証拠でもあろう。

ところが、掲句の蠅は、同じ蠅でも、温かくなり始めた頃に姿を現す春の蠅であり、羽音も比較的やさしく耳障に感じることも少ない。

掲句は、そんな成長期にある春の蠅が、日差しを求め、風に靡くカーテンに誘われて、どこからともなく寄って来ては、いつの間にか居なくなるという、蠅の習性をさりげなく詠いながら、蠅に愛おしさを感じています。

いかに嫌われ者の蠅も、人間と同じ生き物ではないか、少しぐらい多めに見てやっては如何?と問いかけている作者の優しい気遣いが感じられて、微笑ましくさえあります。

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