岡山大学俳句研究部より、10月の俳句が届きました。今月の句は
「かまきりの窓にあらはる会議室」です。
作者コメント
煮詰まった会議をイメージしました。なかなかアイデアが出ない中、会議室の窓にかまきりが来ることで、みんなの心が和み、議論も新しく動き始めるのではないかと思いました。
解説
カマキリの姿は、草むらや家の庭、窓などで良く見かけますが、美しい声で鳴く秋の虫とは些か異なって、どちらかと言えば、グロテスクで怖いイメージがあります。
・かりかりと蟷螂蜂の皃を食む 山口 誓子
・蟷螂の怒号のなきを惜しむなり 中原 道夫
などの句がありますが、いずれの句からも蟷螂のおどろおどろしい動きが目に浮かびます。
良く知られていることですが、雌は目の前の物を食べてしまう習性があり、交尾の時に雄を食べてしまう話は有名。
さて、掲句の情景は、作者の弁にもあるとおり、行き詰まった出口の無い会議中に、ふと窓の方を見遣ると、何とひょっこりカマキリが顔を覗かせているではないか!
誰かの発した「かまきりが…」という声によって、参加者全員が一斉に窓に目を転じ、会議室がざわついた瞬間を詠んだ句。
句の構成は到ってシンプル。「かまきり」と言う生き物と「会議室」という無機質なもののを取り合わせただけで、一見、何の変哲もない句のように見えてしまいますが、中七の「窓にあらはる」によって、会議室に生命が吹き込まれ、人の声、ざわめきまでが聞こえ来るようで、生き生きとした句に生まれ変わりました。
中七が導火線となって、停止していた動画が一気に動き出したかのように感じるのは、私一人だけでしょうか?
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