岡山大学俳句研究部より、12月の俳句が届きました。今月の句は

食堂の暖簾の固き冬初め」です。

作者コメント

いつも通っているお気に入りの食堂がある。冬の寒さが感じられる様になった或る日、店の暖簾をくぐろうとして、ふと固さを感じた。通い慣れた食堂に、少し非日常なるものを感じた刹那であった。

解説

暖簾とは、もともと禅家で簾(すだれ)の隙間を蔽って風よけとする布の帳(とばり)のことです。

掲句の季語は「冬初め」で、季節は冬。冬初めとは、文字通り、冬の初めを意味し、立冬を過ぎた新暦の11月のことで、まだ、晩秋の感じも残る中にも、寒さに向かう引き締まった気分を感じさせる頃。

そんな或る日、作者は、件の定食屋に入ろうとして、入口にある暖簾に触れた途端、つい先日までは、柔らく感じられていた生地が、急に固く感じられたというのだ。

暖簾の生地が何なのか、定かではないが、まさか絹ではあるまい。恐らくは木綿、或いは化繊であろうか。

気温が急に下がって物が硬直するという現象は良くあることですが、掲句の場合は、単に暖簾が硬くなるという客観描写にとどまらず、触れた途端に感じた、冷ややかな暖簾の肌触りを、感性豊かに「固き」と表現したところが魅力です。

岡山大学俳句研究部 過去の作品

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