岡山大学俳句研究部より今月の句が届きました。今月の句は・・
「父の日のコップの縁の丸みかな」
作者コメント
『父の日はいかにも父親らしく振舞おうとする。けれど内にはやはり感謝されたい思いがある。コップの縁の丸みは今まで使ってきたことによるもの、父親として具体的に存在している証拠だろう。』
解説
父の日から1月ほど経ったところですが、掲句より、父を想う息子のしみじみとした情が伝わってきます。何よりも、父と子の関係性をコップという無機質な物を介して詠んだところが興味深く感じます。
作者のコメントに「父親らしく…」とあるのは、嘗ての父親像にありがちな「厳めしさ」「頑固さ」「気難しさ」などを兼ね備えた、硬くてごつごつした巌のようなものをイメージしてのことででしょうか?それとも、嘗ての「父親像」のようにありたいと願いながらも、長年使い慣れてきたコップの縁が丸みを帯びて感じられるように、時が経つにつれて、家族に受け入れられ、自然な存在感を示したいと密かに願っている、心穏やかな父の姿でしょうか?
私は後者であろうと推察します。
何れにしても、掲句から、そこはかとない作者の父親に対する温かい眼差しを感じ取ることができて心地が良い句となっています。
鬱陶しい梅雨の季節に、一服の清涼剤となる爽やかな句です。