(1)限界費用ゼロ社会

ジェレミー・リフキン氏は「限界費用ゼロ社会」が到来すると提唱しています。
「限界費用ゼロ」とは著書で以下のように紹介されています。
「いま、経済パラダイムの大転換が進行しつつある。その原動力になっているのがIoT(モノのインターネット)だ。IoTはコミュニケーション、エネルギー、輸送の(インテリジェント・インフラ)を形成し、効率性や生産性を極限まで高める。それによりモノやサービスを1つ追加で生み出すコスト(限界費用)は限りなくゼロに近づき、将来モノやサービスは無料(フリー)になり、企業の利益は消失して、資本主義は衰退を免れないという代わりに台頭してくるのが、共有型経済(シェリング・エコノミー)だ」と。
「・・・資本主義経済の最終段階において、熾烈な競争によって無駄を極限まで削ぎ落とすテクノロジーの導入が強いられ、生産性を最適状態まで押し上げ、「限界費用(マージナルコスト)」、すなわち財を1単位(ユニット)追加で生産したりサービスを1ユニット増やしたりするのにかかる費用がゼロに近づくことを意味する。言い換えれば、財やサービスの生産量を1ユニット増加させるコストが(固定費を別にすれば)実質的にゼロになり、その製品やサービスがほとんど無料になるということだ。」

これが現実味を帯びてきています。特に、再生可能エネルギーとIoTを活用することによって、エネルギー分野と教育分野と通信分野においては、「限界費用がゼロ社会」に近づき始めていると私は考えています。

(2)限界費用ゼロ社会と再生可能エネルギーとの関係

2012年から日本において再生可能エネルギーの「FIT制度」が始まり、太陽光発電の開発が爆発的に増え続けてきました。実際に当社の実施した投資に対するリターンを考えてみましょう。

メガソーラー(1000kW相当の太陽光発電システム:一般家庭200世帯分の1年間の電力量を生み出す)の投資で約3億円かかりました。年間売電収入が4500万円でした。その収入の50%が返済(元本と金利)に当てられ、そのほかについては必要経費となりました。最終的に10%程度の利益(自由に使えるお金)が残ったとし、ここで限界費用ゼロの法則を適用すると、それを内部留保するのでなく、追加投資として、また新たに太陽光発電(1ユニットの追加)にしていくのです。
経済的な運用だけを単純に考えると、「1ユニット増やしたりするのにかかる費用がゼロに近づくことを意味する」ということに当てはまると考えられるのです。

(3)「楽観主義者の未来予測」

電力と貧困問題に対して未来予測した「楽観主義者の未来予測」の著書を紹介します。

「電力は、潤沢な世界を実現する上で最も重要な要素である。電力が十分にあれば、水不足の問題が解決でき、健康問題の大部分への対応に役立つ。照明があれば教育を促進し、それが貧困の撲滅につながる。
エネルギーの潤沢さを実現したければ、大規模に拡張できるテクノロジーを選ぶ必要がある。理想的には、指数関数曲線に沿うテクノロジーがよい。太陽光エネルギーはこの条件を十分に満たしている。
現在のエネルギー需要に太陽エネルギーが占める割合は1%だと指摘する批評家は、指数関数的世界で、線形的な思考をしているだけのことだ。年成長率30%で拡大していけば、18年後にはエネルギー需要の100%を太陽エネルギーで賄える。」と「楽観主義者の未来予測」で紹介されています。

年成長率30%での拡大は現実味を帯びきています。日本における再生可能エネルギーの設備容量の年平均伸び率と中国でのその成長率を見れば、不可能でないことがよくわかります。
日本における再生可能エネルギーの年平均伸び率は26%。また、中国では、2040年までに2014年の3倍に当たる発電量を目指すとなっています。

電力が貧困脱出の鍵になることは想像できます。が、電力だけでは、貧困を脱出することは困難ではないでしょうか。

まずは、正直な物販やサービス、そして確かな情報を共有できる組織が必要だと思います。つまり、途上国支援(貧困解決)の鍵は、“電力と組織”であると考えるのです。

例えば、再生可能エネルギーを協同組合組織で事業化することによって、しっかりと収益を出して行きます。その協同組合は正直な物販を実現し、経済活動の自立を促して行きます。そうすることによって、貧困問題の解決の一歩を踏み出すことができるのです。

(つづく)まつもとてるお

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