~「カーボンニュートラル」~なぜ日本は実現を目指しているの?
菅総理は2020年10月の所信表明演説で、「2050年にカーボンニュートラルを目指す」ことを表明しました。また、2021年4月には2030年に向けた温室効果ガスの削減目標について、2013年度に比べて46%削減することを目指すと表明し「さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていく」と述べました。
では、なぜ、カーボンニュートラルの実現を目指しているのでしょうか?
地球温暖化への対応が喫緊の課題であることに加え、カーボンニュートラルへの挑戦が次の成長の原動力につながるからです。
環境(Environment)
社会(Social)
企業統治(Governance)
を考慮して投資をおこなう「ESG投資」が世界中で拡大しているため、環境への配慮は企業にとっても取り組むべき重要課題となっています。
菅総理の所信表明演説でも、「もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。積極的に温暖化対策をおこなうことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要です」と述べられました。
カーボンニュートラルを目指す背景には、深刻化している人間活動による気候危機=地球温暖化の問題があります。産業革命以降、温室効果ガスが増えたことで、世界の平均気温は1℃程度上昇しています。このまま温暖化が進行すると、洪水や海面上昇、水・食糧不足、生態系の損失など、さまざまな危機的状況をに陥ってしまいます。
カーボンニュートラルへの挑戦は、日本が掲げる「経済と環境の好循環」を生み出すカギになると期待されているのです。
日本は、「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」・「今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会を実現することを目指す」という目標を掲げています。
では、この目標を実現するためには、どのような取り組みが必要となるのでしょう?
日本のような先進国だけが「脱炭素社会」を実現しても、世界の地球温暖化を止めることはできません。
下の図のように、温室効果ガスの排出量の3分の2は新興国が占めており、新興国のCO2排出削減なくして世界の地球温暖化を止めることはできません。
● 電力部門 → 再エネの導入拡大、水素発電やアンモニア発電における技術開発が進められています。
● 非電力部門 →工場などの産業分野において、機器のエネルギー源を電力にする「電化」の促進や、バイオマスの活用などの技術開発に取り組むとともに、製造プロセスにおいても新しい技術の導入が試みられています。
たとえば、鉄鋼業など製造プロセスでの原料として化石燃料を使用する産業では、電化による非化石化をおこなうことができません。そのため、原料である石炭の代替として水素を利用することで低炭素化を図る技術の研究が進められています
● 運輸の分野 → みなさんも知っている電動自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)の導入拡大などが進められています。また、私たちの家庭においても、給湯器やコンロなどの電化の促進や、水素燃料電池の導入拡大などが進められています。
二酸化炭素は大気中で満遍なく混ざっているので、どこで排出して、どこで吸収しても構わない。例えば、日本で排出した分を別の国で吸収してゼロにすれば、それはカーボンニュートラルになるわけです。自分の国だけのこととしてでなく世界に向けて考えていくことが重要です。
2050年カーボンニュートラル達成のためには、さまざまな既存の技術に加え、新しい技術を駆使して目標に近づけていくことが必要でエネルギーを使う私たちも、エネルギーを低炭素・脱炭素なものへと転換するという意識を持つことが大切です。