今月も岡山大学俳句研究部より5月の俳句が届きました。今月の句は・・・
「鳥交る池を巡りて相識らず」
作者コメント
「囀りの中、池のほとりを歩く、辺りはとても長閑である。そんな中で、すれ違う人も、互いを知らないが、長閑な気持ちに浸っているのは同じである。
さて、そんな中、鳥はどのような気持ちで囀っているのだろうか。」
解説
「鳥交る(とりさかる)」という言葉は、普段、あまり使うことの無い言葉かもしれませんが、歳時記を繙く(ひもとく)と「春から初夏にかけて野鳥の繁殖期に鳥が盛んに囀りうたい、交尾をすること。美声を発し、雌を引きつけるような仕種をする。」とあります。
とすれば、鳥の囀る気持ちは、作者の想像する世界を遥かに超え、もっと熱く本能的な想いを伝えようとしているのかもしれません。池の畔ですれ違うだけの人同士もまた同様かもしれません。
さて、俳句をご存じない方に、今回から、少しずつ俳句の世界をご紹介していきたいと思います。
「俳句」とは??
「俳句」とは、誰でも耳にしたことのある「古池や蛙飛びこむ水の音」のように季語および5・7・5の17音で表現する定型詩のことを指します。
この句では「蛙」が春の季語となっています。このように句の中に季語をひとつ入れるという決まりがあり、これを「有季定型」と言います。
俳人の坪内稔典さんは、俳句のことについて「季節の詩、自然をうたう詩、日本的な象徴詩と見る人など、実にさまざまだが、私は、この形式が極端に短いということから、まず覚えやすい詩だと考えている。覚えやすい作品であるためには,口調がよくて音楽性に富んでいることに加えて、認識や感覚や表現法に、新しさや意外さ必要だが、ともあれ、小説や自由詩と比べると、何といっても俳句は覚えやすい。つまり、俳句は、簡単に覚えてどこででも口にできる口誦の詩」と解説しておられます。
「口調が良くて、音楽性に富んでいて」というところは、全く同感で、詠むとき、或いは聴くとき、心地よい気持ちにさせてくれる点も、俳句の大切な要素かもしれません。(続く)