コープエナジーならの関係者で、一般社団法人 徳島地域エネルギー(以下、「tene」という)を視察してきました。コープエナジーならでは、すでに太陽光発電事業をスタートしており、次なる新規事業として小水力発電の開発、木質バイオマス利用の取り組みをスタートしております。また、次年度からスタート予定の「再エネ基金」についても検討しています。teneで取り組まれている「コミュニティハッピーソーラー」も大変興味深い事業の1つです。http://www.tene.jp/

teneの豊岡事務局様より、徳島地域での環境エネルギー事業の取り組みや地域との連携などのお話をお聞きしました。平成24年3月設立以前から活動を開始され、平成24年度からスタートしたFIT制度をうまく活用し、これまで地元で太陽光発電を20メガ設置。地元金融機関と勉強会を重ね、ファイナンスの問題もクリア。その後、小水力発電事業や木質バイオマス事業の開発に着手している。補助金に頼らず自分たちで考え、また目指すのは「生活」とどのように関係を持たせていくのかという言葉が印象的でした。

 

1.コミュニティハッピーソーラーについて

20メガの太陽光発電事業以外に、コミュニティハッピーソーラーという企画と合わせて、現在10箇所で合計出力約1.5MWの太陽光発電所が稼動しています。現在募集中のコミュニティハッピーソーラーは、鳴門と牟岐(むぎ)とのエリアでの取り組みです。すでに「佐那河内村みつばちソーラー」の募集(322口)は終了したようです。

みつばちソーラー  みつばちソーラー3  みつばちソーラー2

発電所に隣接してビオトープがあり、ヤギも飼っている!少し驚きました。

 

仕組みは寄付を募り、地域の農林水産業を応援するといった取り組みをされています。地域の発電会社が地域の未利用公有地等を利用し、建設費の10%の資金を寄付金で賄い、建設します。ファンドとは違って、寄付をうまく活用しながら、発電状況(売電収入)に応じて少しずつ還元していくという仕組みは、teneの特有の取り組みです。私も早速申し込みました。これから、検討する「再エネ基金」についても大変参考になりました。

仕組み

(出典)一般社団法人 徳島地域エネルギーのホームーページより

2.新付能小水力発電所について

つづいて、小水力担当の森参事と佐那河内村へ移動。途中、Tene発祥の地である佐那河内事務所を見て、急峻な山道を越え、新府能発電所へ。

事務所

 

 

Tene発祥の地である佐那河内村事務所。

今後は森林資源の倉庫など、バイオマスの拠点に活用される予定。

 

 

(1)概要

概要

かつてここには、旧府能発電所(300kW 落差290m(常時出力120kW))がありましたが、1973年に廃止、村に譲渡されました。

以降、水は農業用水に活用されていましたが、2011年に発電所復活の検討を開始、上段・下段に分けて開発を進める方向性を決め、上段発電所が2015年9月に竣工。

(上段発電所)

落差129m 最大0.044㎥/s(常時0.035㎥/s)

旧発電所のヘッドタンクを改修

PE導水管を旧農業用水管に沿って埋設

府能林道沿いに、最大45kW(常時平均28kW)の発電所を設置。

FIT活用により、税抜34円/kWhで四国電力へ売電。売電益は農業集落排水施設の電気代(年間1,000万円程度)の補てんに活用。

 

(2)特徴

この発電所の特徴は、落差を利用した50kW以下の低圧発電所を、低コストで実現していることです。イタリアIREM社製のぺルトン水車を導入することにより、建設費用を7,600万円程度に抑え、事業性を確保しています。

森参与、水車

 

森参与とIREM社製ぺルトン水車(縦軸6射)。

IREM社製水車は、ローコストである以外にも、メンテナンスの簡易さが特徴。全体的に家電のように洗練され、こなれたデザイン・カラーリングが感じられます。

 

 

 

操作盤

ヘッドタンクの放流量を感知して、射数のオンオフを自動制御し、出力をコントロールします。モニターですべて「見える化」されています。

IREM社は一定レベルの完成品在庫を持っており、ノズルの差し替えなどで短期間で出荷が可能とのこと。国内メーカーのように、order madeでないこともコストが安い理由だそう。

 

 

タンク タンク2

ヘッドタンクは旧発電所・農業用水で活用していたものを改修して利用。

導水管は既設農業用水路横にPE管を埋設、モルタルで埋めてあります。これで動物にかじられる?懸念もなくなるそう。随所に建設費用の軽減策が見られます。

 

運転制御盤

連系制御盤は、電力会社OBの仲間にお願いして自分たちで設計するなど、随所に建設費用の軽減を図っておられるところにも感銘を受けました。

発電施設内は、水車を持ち上げるクレーン設置をせずにユニック車が入れるよう、間を空けて広く作られています。

これまでのところトラブルは特になく、始動期に導水管に残っていた20mmほどの石が詰まったのみで順調に推移しているとのことでした。

50kW以下の低圧規模でも、土木コストが低いものであれば海外製水車の活用によって事業性が見えてくる、というのが今回の大きな発見でした。事業開発の選択肢が広がったことは大きな成果と思います。

また、自分たちでできるところは自分たちでやってコストを下げる、という姿勢には感銘を受けました。

3.木質バイオマスチップボイラーについて

吉野川市の医療法人さくら診療所に設置された、オーストリアETA社の木質チップボイラー(50kW ☓ 2基)について、輸入・設計・施工を主に担われた一般社団法人徳島地域エネルギーの羽里さんに説明を頂きました。

ボイラー

 

ボイラーと同じ高さに設置された(駐車場からは地下になる)4m四方のチップ庫。

切削チップは主として製紙工場に出荷されるものを、入手。土場で半年ほど自然乾燥するなどして、含水率をウェットベース30%以下に落としたものを用いています。4トントラックで週1〜2回配達されます。

 

 

 

ボイラー2

オーストリアETA社の乾燥チップボイラー。 真空ボイラーの輸入については日本では50kWを超えるものについては規制があり、輸入時に指定の検査機関で無圧開放を行う必要があり、その際に外気に触れることからサビなどが起こりやすい可能性があり、50kW以下の真空ボイラーを複数台選択している理由の一つとのことです。

 

 

当該施設では元々は340kWの灯油ボイラーを利用していましたが、その後施設の増築等に伴い熱需要は増大し、現状では灯油ボイラーであれば600kW近くの最大熱需要が生じています。

チップボイラーの導入にあたっては、まず熱需要、運転パターンの把握を行った上で、概ね6分の1程度の出力のバイオマスボイラーを導入し、ピーク時の熱需要は熱交換タンクを用いてまかなう設計です。

(従来の灯油ボイラーも非常時の追い焚き用に残してあります)

熱交換器

熱交換器(1.6トン+08トン)→水道加熱用の熱交換器

熱交換器(1.6トン)→井戸水を加温して、頻繁にお湯を入れ替える必要がある特殊浴槽用の熱交換器として利用されています。

(井戸水と水道水を混ぜて使うことは法令上できないそうです)

熱交換器内の熱媒は水道水(軟水)を使用。稼働以来3年間水を変える必要が生じていないとのことです。

 

ボイラーと熱交換器については半額を国の補助でまかなっておられます。

モニター画面

熱交換器内の温度モニター画面。接触式温度計で6箇所の温度をリアルタイムで表示しています。温度計が壊れやすいのが欠点とのことです。(チップ詰まりや異常燃焼などはこのボイラーでは稼働以来発生したことがないそうです)

60℃のお湯を作るため、底の最低温度が60℃になるように自動制御で加温されています。外気温もモニタリングして、外気温に合わせて運転強度も自動的に変更されます。

 

 

スクリュー  チップ庫からチップをボイラーに供給するための回転式スクリュー(外から)

ETA社のボイラーを導入されるにあたっては、羽里さんたちは1週間の導入研修を現地で受けられました。基本設計はETA社によるものですが、配管の立面図などは用意されていなかったため、羽里氏と施工担当桑原電気で配管の実施設計が行われました。

来年2月より、排気再循環アタッチメント(ETA社のもの)を追加して、竹チップの燃焼実験を行う予定とのことです。竹チップをそのまま燃焼すると高温となってシリカのスラグによる灰の固着が発生しやすくなるため、排気再循環を行って温度を下げ、庫内のO2濃度を適正に保つことでそれを防ぐことを想定されています。

 

さくら診療所の運転実績

表

現在羽里さんは徳島県地球温暖化防止活動推進センターのバイオマスアドバイザーとして、県内施設の化石燃料ボイラーからバイオマスボイラーへの診断、また他県での導入のコンサルティングも実施されています。家庭用ボイラー・ストーブの導入も今後積極的にはかっていきたいとのことです。

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