安全・安心のエネルギーを供給していく。これは、私の変わらぬ目標です。

会社を設立して、3年が経過しました。多くの方に支えられ、おかげさまで当初予定していた自社サイトであるメガソーラー発電所(おひさま井原発電所:1,000kW)とミドルソーラー発電所(おひさま東洋コルク発電所:300kW)の発電がスタートしております。また、地域における太陽光発電事業を支援した事業者様におきましても順調に再生可能エネルギーによる発電事業がスタートしております。本当にありがとうございます。

さて、再生可能エネルギーの全量買取制度(FIT制度)が施行し、3年間が経過しました。制度設計上、多くの課題は残したものの、生活者にとって再生可能エネルギー、特に太陽光発電がかなり身近な存在になったと思います。太陽光発電に対する設備認定だけでも2,369万kWとなりました。2011年度当初、日本政府が、太陽光発電の導入目標として掲げてきた数値(2020年に約2,700万kW,2030 年には約5,300万kW)に相当する勢いです。2015年5月現在、経産省の提示した電源構成においては、太陽光発電などの再エネの比率も22〜24%となっております。今後、コージェネレーションの導入や省エネの普及や蓄電技術が進むに連れて、再エネ比率が高くなり、原子力発電を頼らなくても良い社会が見えてきたと考えます。

人生の転機は、人と本とで訪れると思います。今回は、ある本の1節をご紹介します。

宇沢弘文氏の提唱した「社会的共通資本」という言葉をご存知でしょうか。私が今の仕事をスタートしたときに、説明していたキーワードの1つに「環境公益的事業」というのがあります。私は再エネや省エネ事業の普及は、いずれも気候変動の回避に資する事業としてとらえています。私はこの本を読んで、社会的共通資本の中に、この1つがあるのだと実感しました。では、社会的共通資本とは何か。

「社会的共通資本の具体的な形態は、三つの類型に分けられる。自然環境、社会的インフラストラクチャー、制度資本の三つである。この分類は必ずしも、網羅的でもなく、また排他的でもない。社会的共通資本の意味を明確にするための類型化と考えてもらって構わない。

自然環境は、森林、河川、湖沼、沿岸湿地帯、海洋、水、土壌、大気など多様な構成要因から成り立っている。これらの自然環境は、人間が生存するために不可欠なものであるだけでなく、人々の経済的、文化的、社会的活動のために重要な機能をはたしている。このような視点から、自然環境はしばしば自然資本とよばれているわけである。

社会的インフラストラクチャーはふつう社会資本とよばれているものである。道路、橋、鉄道、上・下水道、電力・ガスなどから構成されている。これらの社会的インフラストラクチャーの構成要因は、それぞれの機能に応じて、公的、私的いずれかの所有形態をとることはいうまでもない。

制度資本は、教育、医療、金融、司法、行政などさまざまな制度的要素から成り立っているが、自然環境、あるいは社会的インフラストラクチャーと必ずしも区別されない場合も少なくない。」

「これらはいずれも、仮に私的所有あるいは管理が認められたとすれば、実質所得分配の不平等化という面からも社会的にきわめて望ましくないような状況を生み出す。」(出典:「経済と人間の旅」(日本経済新聞出版社))

つまり、「電力、ガス」などは社会的共通資本の社会的インフラストラクチャーに位置づけられます。私たち生活者は、これまで特定の電気事業者やガス事業者からしか電力やガスを購入することができませんでした。しかしながら、昨年度だけでも多くの「エネルギー生産市民」が誕生しました。来年4月から「電力小売自由化」がスタートされようとしており、エネルギー生産市民から余った電力を集めて、電力を小売りすることも可能になるでしょう。

日本における最終エネルギー消費の構成比(2012年)を見ると、家庭部門14.3%、業務部門20.0%、産業部門42.6%、運輸部門23.1%となっています。国としては、これらすべての部門において十分なエネルギーを供給していく責務があると思われます。しかしながら、エネルギー生産市民としては、まずは、家庭、業務、運輸部門におけるエネルギー問題を解決していけば良いと考えます。

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そのカギを握る技術の1つが蓄電池です。

昨年から注目しているのが、テスラの電気自動車です。蓄電池85kWh搭載の電気自動車が市販価格で約800万円と聞いています。この自動車を蓄電池とみなすとkWh当たりの販売単価は約10万円。これだけでなく、最近発表されたテスラの家庭向けの蓄電池は10kWhで約42万円です。つまり、この蓄電池と太陽光発電を組み合わせると、ほとんどの家庭が遠く離れた大規模発電所からの電力を購入することなく、その地域単位で電気をまかなうことができるようになると考えています。

これに加えて、日本では「燃料電池」や「水素エネルギー」の市場がスタートしようとしています。これらの技術によって、家庭分門と運輸部門におけるエネルギー問題が大きく解決されていくことが予想できます。今年は、「エネルギー蓄電市民」の誕生の年でもありますね。

今後3年間、おひさまエナジーステーションでは、太陽光発電事業による導入支援サービスだけでなく、小水力発電並びに木質バイオマス利用の開発にも力を入れていきます。また、市民がエネルギーを選択できるネットワークを構築するとともに、来年4月から始まる「電力小売自由化」に向けて、PPS事業の立ち上げにもチャレンジしていきます。家庭におけるエネルギー供給は激変すると思われます。各家庭で、太陽光発電、電気自動車や蓄電池を活用した「オフグリッドサービス」も検討していきます。

2013年における年間発電電力量の構成は、原子力(1.0%)、天然ガス(43.2%)、石炭(30.3%)、石油(14.9%)、水力(8.5%)となっており、再生可能エネルギー等は2.2%となりました。

これからも日々の仕事を積み重ね、環境にやさしい地域エネルギー事業のプラットフォームを提供し、人と自然が共生し豊かに暮らせる社会を目指しながら、安全・安心のエネルギーを供給できるようスタッフ一同仕事に励んでまいります。

 

<会社設立3周年を記念して>

2015年5月28日

おひさまエナジーステーション株式会社

代表取締役社長 松本照生

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